水耕栽培ってご存知ですか?土ではなく、栄養素を含む水で作物を栽培する方法。効率的で、生長が早く、しかもおいしい!と、近ごろ注目を浴びている農法です。しかし比較的歴史が浅いこともあり、研究開発が充分になされていないのも事実。そんな中、水耕栽培の可能性を信じて果敢にチャレンジする喜六。大阪の郊外、豊かな緑に囲まれた山あいに、彼らの農場がありました。
水耕栽培と言えば、LEDの光で室内で栽培する人工的なイメージを持つ人もいるかもしれませんが、ここでは太陽の光がさんさんと降り注ぐビニールハウスの中で育てています。代表の喜多章一郎さんいわく「ハウスなんで雨露はしのげますけど、外でやっているのと変わりはないですね。基本的には農薬は使ってませんのでアブラムシはつきますし、その駆除に手間もかかります。機械的なように見えて、実はかなりアナログなんです」
ここで力を入れて育てている野菜は、レストランでしか食べたことのないような、海外の珍しい品種。たとえば、イタリアのほうれん草に似た野菜、スイスチャード。「最初すっごい甘みが強くて、最後に苦味がちょっとくる。レストランのシェフに言わせると、この苦味がニンニクを使った料理と合うらしいです。あと普通でしたら筋ばっていて生食は無理なんですけど、うちのは柔らかいんで、生でも食べていただけます」他には、リーフチコリは柔らかくて苦味が強く、サラダにぴったり。さらにベビーリーフはシャキシャキッと食感が立体的でみずみずしい。水分を長く保つため、時間が経ってもしなりにくいのが特長です。
また喜多さんのいちおしは、ピートモスの培地で育てるミニパプリカ。「木になったまま完熟させるので、甘みが普通のパプリカよりも倍じゃ効かないくらいの甘さなんです。ピクルスにしてもいいですし、炒め物にまるごと入れていただいても見た目にかわいいと思います」
珍しい野菜を、珍しい栽培方法で。もちろん最初からうまくいったわけではありません。「これまでデータ管理もされてなかったので、病気が出たらその都度調整したり、肥料の使い方もいろいろ試行錯誤しました。ただ、お米でしたら年間1回、30年で30回しか収穫できないのに比べて、水耕栽培は生長が早いので、年に何回も獲れて、その分いろんな実験ができるんで、安心で安全なものを、しかもおいしく提供できるようになりました」
しかも、それを安く、安定的に提供するというのも「喜六」が心を砕くところ。「農産物って特産品ではないと思うので、普通の人が普通に食べられる、生活の中に入り込んだ野菜を作りたいんです。そのためには量ありきで、しかもおいしくないといけないと考えています」
また「おいしい」の答えは自分たちではなく、食べる人が持っている、とも。
「僕らが『どう、いいでしょ?』と話をするよりも、お客さんが今まで他のレタス買ってたけど、うちのに出合って、他では買えないって言ってくれはる。しかも、それがかなり多い。なので食べていただければ、他とはちょっと違う、味の質が分かると思います。それがすべてですね」
喜六マルシェ出店の有 / 無は 下記スケジュールページより
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